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アメリカにおける物流を取り巻く環境

アメリカにおける物流を取り巻く環境

アメリカにおける物流を取り巻く環境

目次



※本内容は2023年8月時点の情報です。
※当記事は、海外進出を検討されている企業様の中でも、特にアメリカにおける拠点設立を検討されている企業様に役立つ情報を提供しています。
※参照元URL:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)Webサイトhttps://www.jetro.go.jp/indexj.html

(2)アメリカでの倉庫運営で絶対知っておくべき法規制やルールとは?


アメリカ各州により異なる法規制やルールの中で、物流業務に関係する留意すべき法律「個人情報保護関連法」「食品トレーサビリティ関連法」「倉庫作業員保護関連法」について解説します。倉庫業務・運送業務を自社運営または業務委託している会社、もしくは業務委託サービスを提供している会社は、これらの法律を理解しておく必要があります。

個人情報保護法関連の法律
カリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act)

カリフォルニア州で2018年に制定され、2020年に施行された個人情報保護法「カリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:以下、CCPA)」は、「EU一般データ保護規則」と似た法律です。CCPAは、物流においてどのような影響があり、どのような対応が求められるのでしょうか。

日本企業がCCPAに対応するためには、法的な規制への対応だけでなく、企業の組織文化や意識変革なども重要になります。また、個人データ保護に対する重要性を認識し、適切な対策を取ることが必要です。



(1)データマッピングとプライバシーアセスメント

データフローの可視化やリスク評価、プライバシーアセスメントの実施が重要です。個人データの収集、使用、共有、削除には透明性、確実性が求められます。


(2)データサブジェクトに関する権利の保証

CCPAでは、個人データの所有者に、アクセス、削除、修正などの権利が与えられています。企業はこれらの権利を実現するプロセスや手続きを明確にすることが必要です。


(3)セキュリティとデータ保護対策

個人データのセキュリティと保護に関する要件が厳しく規定されており、適切な技術、組織的な対策を講じ、個人データの漏えいや悪用を防ぐためのセキュリティ対策の強化が必須です。


(4)サプライヤーとの契約の見直し

企業とサプライヤー間のデータ共有や取り扱いに関する規定も含んでいるため、サプライヤーとの契約を見直し、CCPAに準拠するための規約や措置を組み込むことも必要になります。


(5)監督と報告義務

個人データの取り扱いに関する監督機関との連携や報告の義務があることから、内部監査や報告プロセスの整備が必要です。



食品トレーサビリティ関連の法律

アメリカの食品トレーサビリティに関する法律はどのようなものなのか、また日本企業がそれら法律にどう対応すべきかを説明します。

アメリカでは、食品の安全と品質を確保するための食品トレーサビリティに関する法律を遵守することが必要です。アメリカ食品安全強化法(Food Safety Modernization Act:以下、FSMA)やアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration:以下、FDA)が策定する規制に適合するための対策が求められます。アメリカの食品トレーサビリティに関する法律や規制を理解し、社内体制の継続的な改善と適応、最新の動向や規制変更に常に注意を払うことが重要です。
特に以下の法令は、物流業務に深く関わります。

食品安全強化法第102条

アメリカ内でヒトや動物の消費に供するための食品を製造および加工、梱包、保管する国内外の施設は、バイオテロ法に基づくFDAへの施設登録が必要です。

食品安全強化法第111条

食品の衛生的な輸送を確保することが義務付けられました。具体的には、食品の温度の不適切な管理、積荷交換時の車両の不完全な清掃など、輸送上の食品安全リスクを予防することが求められています。

食品安全強化法第201条、第306条

FSMAの制定により、FDAの権限が大幅に強化され、アメリカ内に流通する食品を製造および加工、梱包、保管するアメリカ外の食品関連施設に対しても査察が行われることになりました。

食品安全強化法第204条

トレーサビリティ強化を目的として、FDAが指定する高リスク食品については、2年間の記録保存を義務付けられることになりました。


(1)システムとプロセスの整備

生産工程や流通経路の追跡、製品ロットやバッチの識別、情報の保管と共有など、企業内でのデータ管理とプロセスの確立、トレーサビリティシステムの整備が必要です。


(2)データの正確性と信頼性

食品トレーサビリティでは、生産者、供給業者、流通業者とのデータ共有などを強化し、正確なデータを迅速に収集、管理することによって、データの信頼性を確保することが必要です。


(3)監査と監視の強化

自社のトレーサビリティシステムとプロセスを定期的に確認し、企業の監査や監視が要求された場合に、法的要件を満たしていることを迅速に提示できるようにすることが必要です。


(4)危機管理

万が一の食品安全上の問題やリコール対応に備え、危機管理計画の策定、迅速かつ適切な対応が可能な体制を整える必要があります。



カリフォルニア州倉庫ノルマ規制法

アメリカの倉庫作業員の労働環境改善に関する、カリフォルニア州倉庫ノルマ規制法:以下、AB701)とその対応について解説します。

アメリカカリフォルニア州では、倉庫業界における労働環境や作業員保護の目的から、倉庫作業員の労働条件、休憩時間、報酬体系、業務ノルマ設定などに関する規制であるAB701が2021年9月に成立されました。


AB701概要

  • 従業員の雇用主である企業に対し、従業員の食事、休憩時間、トイレの使用時間をアルゴリズムで追跡することを禁止
  • 生産性、作業スピードに関するノルマを従業員に開示することを義務化
  • 従業員に開示していない業務ノルマがあった場合、それの未達を理由とした解雇禁止
  • 米労働委員会は違反企業に出頭命令が可能



(1)業務ノルマ設定と労働環境の見直し

業務ノルマの設定や労働環境をAB701に沿うよう見直し、従業員の健康と安全を確保する対策を実施することが必要です。


(2)データ収集と報告義務

倉庫業者は、従業員の業務ノルマの達成状況や退職率などのデータを収集し、定期的に労働者へ開示する義務があるため、必要なデータの収集と開示のためのシステムやプロセスを整備しなくてはなりません。


(3)従業員の参加と意識向上

倉庫業者は、従業員とのコミュニケーションを強化し、労働条件や業務ノルマの設定に関する意見交換やフィードバックの機会を提供することで、従業員の意識向上と参加を促進することが必要です。


(4)法的アドバイスと専門家の支援

法的なアドバイスや労働法の専門家の支援、規制要件の解釈や実施に関する指導を受けることで、適切な対応策を講じることが必要です。



ニューヨーク州倉庫作業員保護法

倉庫作業者関連の法律としてもう一つ、ニューヨーク州の倉庫作業員保護法についても解説します。

アメリカニューヨーク州で2022年12月に署名された「倉庫作業員保護法(Warehouse Worker Protection Act)」は、作業員保護の目的で、厳しい業務ノルマなどを課すことを制限する法律です。雇用主は、本保護法の内容を詳細に理解し、労働条件に関する規定などを把握し、従業員の権利と安全を保護するための取り組みを行うなど、法律に準拠するための対策を講じなくてはなりません。


(1)労働環境の改善

作業場の安全性確保や労働時間の管理、従業員への教育・訓練、適切な賃金設定など、労働環境の改善に取り組むことが必要です。また、雇用主は従業員とのコミュニケーションを強化し、関係構築に努めることが必要です。


(2)従業員の権利と福利厚生

適正な賃金体系の確立、休憩時間の遵守、退職手当や健康保険などの福利厚生制度の整備など、倉庫作業員の雇用主である企業は、従業員の権利と福利厚生を保護する必要があります。


(3)データの収集と開示義務

倉庫作業員の雇用主である企業は、本法律に違反なく対応するために、従業員の労働時間や労働条件に関するデータの収集と従業員への開示を適切に実施することが可能なシステムやプロセスを整備することが必要です。


(4)監査と監視の強化

倉庫施設や労働条件を定期的に監査し、法的要件を遵守していることを確認するための体制を整備する必要があります。上記項目も含めて、ニューヨーク州の労働法や規制に精通した専門家の助言やコンサルタントの支援を受けることが重要です。



州ごとに異なる規制とその対応

アメリカ内とはいっても、州ごとに必要なライセンスや法規制には違いがあります。倉庫業者、倉庫業務を自社で運営および他社へ業務委託している会社は、物流拠点があるアメリカ各州のライセンスの取得や商法の適用について理解が必要です。

アメリカで物流拠点を運営するためには、各州の法律や規制に従う必要があります。物流拠点があるアメリカ各州においてライセンスの取得や商法の適用に関する具体的な要件は、州ごとに異なるので、詳細な情報を得るためには各州の関連機関や専門家に相談し、正確かつ最新の情報を入手し、迅速な対応が求められます。

時差なく、求められるタイムラインに応じた業務ルールの策定および現場への定着を目的とした情報システムへの反映など、対応の取れるパートナー選定が重要です。



(1)ライセンスの取得

各州の運輸部門や州の経済開発機関など、関連する機関に連絡し、州によって異なる種類のライセンスや許可を取得することが必要です。例えば、倉庫業務を行う場合は倉庫業者のライセンス、運送業務を行う場合は運送業者のライセンスが必要です。


(2)商法の適用

契約法や労働法、倉庫業法、交通法など、各州の商法や規制に従う必要があります。各州は独自の商法を持っており、契約の要件や労働条件、倉庫業務の規制なども州ごとに異なるので、各州の商法に詳細に目を通し、遵守しなければなりません。


(3)税金と規制

物品の販売税や法人所得税、労働者の給与など、各州の税金と規制に従う必要があります。また、環境保護や労働安全規制などの州の規制も遵守する必要があります。




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