ASEAN(東南アジア諸国連合)の経済・物流事情
ASEAN(東南アジア諸国連合)の経済・物流事情
※本内容は2024年7月時点の情報です。
ASEANは、東南アジア地域の経済や政治的な連携を深めることを目的とした国際機関です。1967年、タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5か国が「バンコク宣言」を発表し、地域の平和と安定をめざして設立されました。その後、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが次々と加盟し、現在は10か国で構成されています。
2015年には、政治・安全保障、経済、社会・文化の3本柱での協力関係を一層推進する「ASEAN共同体」を発足させました。2022年時点のASEAN加盟国の総人口は約6億7,900万人、GDP総額は約3兆6,200億米ドルと、人口規模では欧州連合(以降、EU)を上回る一方、経済規模ではEUを下回っています。
ASEANは、日本、中国、韓国を加えた「ASEAN+3」や、さらにオーストラリア、ニュージーランドを含む「地域的な包括的経済連携(RCEP※1)」など、より広域的な経済連携の枠組みにも参加しています。
※1:Regional Comprehensive Economic Partnershipの略。
加盟国(10カ国:ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム) | |||
面積(2021年) | 449万k㎡ | 日本(37.8万k㎡)の11.9倍 | 世界(1億4,049万k㎡)の3.2% |
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人口 | 6億7,945万人 | 日本(1億2,512万人)の5.4倍 | 世界(79億5,115万人)の8.5% |
GDP | 3兆6,223億米ドル | 日本(4兆2,311億米ドル)の85.6% | 世界(100兆5,620億米ドル)の3.6% |
1人当たりGDP | 5,331米ドル | 日本(33,815米ドル)の15.8% | 世界平均(12,647米ドル)の42.2% |
貿易額(輸出+輸入) | 3兆8,284億米ドル | 日本(1兆6,437億米ドル)の2.3倍 | 世界(49兆5,327億米ドル)の7.7% |
(注)面積については2021年の統計を使用
1人当たりGDPは、名目GDPを人口で除して当室で算出
参照元:「目で見るASEAN-ASEAN経済統計基礎資料-」(アジア大洋州局地域政策参事官室、2023年12月)を元にロジスティードソリューションズにて作成(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf)
2022年のASEAN主要6か国の実質GDP成長率は高水準となっています。インドネシアが5.3%、タイが2.6%、マレーシアが8.7%、フィリピンが7.6%、ベトナムが8.0%と、2021年と比べると大幅に成長しています。一時的に新型コロナ禍の影響で経済が落ち込んだ後、各国で個人消費や観光関連産業が活発化し、国内需要がけん引役となって経済が回復軌道に乗っています。
単位:%
2021年 | 2022年 | 2022年 | ||||
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Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | |||
インドネシア | 3.7 | 5.3 | 5.0 | 5.5 | 5.7 | 5.0 |
タイ | 1.6 | 2.6 | 2.2 | 2.5 | 4.6 | 1.4 |
マレーシア | 3.1 | 8.7 | 5.0 | 8.9 | 14.2 | 7.0 |
シンガポール | 8.9 | 3.6 | 4.0 | 4.5 | 4.0 | 2.1 |
フィリピン | 5.7 | 7.6 | 8.2 | 7.5 | 7.6 | 7.2 |
ベトナム | 2.6 | 8.0 | 5.1 | 7.8 | 13.7 | 5.9 |
参照元:「ASEAN各国の実質GDP成長率」(経済産業省)を元にロジスティードソリューションズにて作成(https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i1340000.html)
日本とASEAN諸国の経済的なつながりは年々深まっており、この緊密な関係を築いてきた背景には、さまざまな取り組みがあります。
まず、1981年に設立された日本アセアンセンターは、ASEAN発の対日輸出促進、対ASEAN投資促進、インバウンド観光振興に長年にわたり尽力してきました。近年では、ASEAN発の対日投資やインバウンド観光、人的交流の促進にも注力しており、日ASEAN間の経済交流を支える役割を果たしてきました。
また、両者は活発な経済交流を一層円滑に進めるため、二国間の経済連携協定や投資協定、日・ASEAN包括的経済連携協定を次々と締結しています。貿易・投資に加え、競争政策、知的財産、人の移動など、幅広い分野で協力関係を構築しています。
国 | 首都 | GDP (ドル) |
GDP/人 (ドル) |
面積 (km2) |
通貨 | 公用語 |
---|---|---|---|---|---|---|
ラオス | ヴィエンチャン | 188億 | 2,551 | 237千 | キープ | ラーオ語 |
ベトナム | ハノイ | 3,626億 | 3,694 | 331千 | ドン | ベトナム語 |
フィリピン | マニラ | 3,941億 | 3,549 | 300千 | ペソ | フィリピン語 英語 |
ブルネイ | バンダルスリブガワン | 140億 | 31,723 | 5,770 | ブルネイドル | マレー語 |
シンガポール | なし | 3,970億 | 72,794 | 719 | シンガポールドル | マレー語 中国語 英語 タミル語 |
インドネシア | ジャカルタ | 11,861億 | 4,292 | 1,911千 | インドネシアルピア | インドネシア語 |
マレーシア | クアラルンプール | 3,727億 | 11,371 | 331千 | マレーシアリンギット | マレー語 |
カンボジア | プノンペン | 270億 | 1,591 | 181千 | リエル | クメール語 |
タイ | バンコク | 5,060億 | 7,223 | 513千 | タイバーツ | タイ語 |
ミャンマー | ネピドー | 651億 | 1,187 | 677千 | ミャンマーチャット | ビルマ語 |
参照元:「日本とASEAN 2023年3月改訂」(外務省ホームページ)を元にロジスティードソリューションズにて作成(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100489369.pdf)
東南アジア市場は今後も経済成長が見込まれ、巨大な消費市場として注目を集めています。人口増加と生産性向上に加え、外資規制緩和の動きもあり、日系企業にとって同市場への進出は魅力的なビジネスチャンスです。