絶え間なく取り組んできた効率化と誤配送対策。
これまでの手法では乗り越えることが難しかった限界を超えるために、
タブレット端末を導入しました。
タブレットピッキングシステム
(写真左より、西日本日立物流サービス株式会社 中国第一営業部 広島営業所 倉配係 係長 河野 聡氏、
株式会社日立物流 西日本営業本部 中国地区営業本部 中国第二営業部 広島営業所 所長 赤森 幸司氏、
株式会社日立物流 西日本営業本部 志和出張所 出張所長 近江 美徳氏)
(写真左:カートによるピッキング作業の様子、
写真右:フォークリフトに搭載している端末の様子)
株式会社日立物流 志和出張所では、スマートデバイス(タブレット端末)を導入し、ペーパーレス化を実現。作業の効率化と誤ピッキング防止を実現し、倉庫業務全体の最適化に取り組んでいます。導入の経緯と効果について紹介します。
* 取材時期 2015年8月
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。
* 2023年4月1日付で、日立物流はロジスティードへ商号変更しました。
* 2023年4月1日付で、日立物流ソフトウェアはロジスティードソリューションズへ商号変更しました。
もくじ | |
---|---|
|
7インチと10インチ、ディスプレイのサイズが異なる
2種類の端末を利用。フォークリフトに搭載するため、耐振動性や耐障害性に優れた機種を選定し、長時間の利用を考慮して、バッテリーを交換できる機種を選定したという。
当倉庫においては、 時期によって異なりますが、平均すると月間で約15,000個の商品を出荷しています。現在、12台のタブレット端末を利用して、「出荷ピッキング業務」と「日次棚卸業務」を行っています。
タブレット端末は7インチと10インチ、ディスプレイのサイズが異なる2種類の端末を導入しており、冷蔵庫や冷暖房機といった大型家電のピッキングを行うフォークリフトには10インチの端末を、付属品や消耗品といった小型商品のピッキングを行うカート(台車)には7インチの端末を搭載しています。
実際の作業の流れは概ね次の通りです。
「スマートデバイスの活用によるペーパーレス化が、限界を突破するカギとなると確信しました」(赤森氏)
当倉庫では、常日頃から作業の効率化、そして誤出荷の撲滅に取り組み続けています。さらに言えば、その成果は確実に出ており、今後も継続して取り組んでいかなければならない課題であることは間違いありません。
その一方、このような改善の取り組みに対して、どのように優れたアプローチでも限界はあります。そのため、閉塞感を抱き得ない場面も少なくありません。もちろん、コストや手間を惜しまなければ限界を超えられる場面もあるかもしれませんが、コストや工数の肥大化をともなう取り組みは改善とは言えません。
前置きが少し長くなりましたが、そのような場面で、スマートデバイス(タブレット端末)の活用によるペーパーレス化というこれまでとは異なるアプローチで、効率化と誤出荷防止対策を実現するというのが、タブレット端末を導入した第一のねらいとなります。
また第二に、タブレット端末による作業は「ピッキング」や「棚卸」といった作業単位の改善のみならず、リアルタイムに現場の情報をWMSとやり取りする仕組みを確立することで、倉庫業務全体の最適化を図るというねらいもありました。
これまでは紙の帳票を使って、ピッキングや棚卸業務を行っていました。そのため、作業が終わって報告を受けるまでは、作業の進行状況や終了時間の目処などを正確に把握するのは容易ではありません。その結果、特定の作業者やグループに負荷が大きくかかっていて、別の作業者は作業に余裕があったとしても、リアルタイムに作業負荷を分散して適正化を図ることは容易ではありません。
わかりやすい例で言えば、特定の作業者は予定よりも作業が早く終わっているのにもかかわらず、別の作業者は残業をしているといったことが発生しかねない状況でした。
もちろん作業を配分する側でも、そのようなことが起こらないように配慮してきましたし、現場では各グループリーダーや作業者自身が互いにフォローしながら作業をしています。しかし、このような方法では、カンと経験に頼った部分しか最適化できず、結局は、ムラやムリが発生する要因にもなりかねません。
一方、リアルタイムで正確に各作業者の作業進行状況を把握できれば、客観的かつ適正に作業の割り振りを変更しながら、全体として最適な作業指示を出すことができるようになります。また、過去の実績を分析することで、現状もしくは未来の最適化も思案することが可能になり、本当の意味での「倉庫業務全体の最適化」を図ることができます。
「作業効率という点に関しては、大きな成果が上がっています」(近江氏)
「出荷ピッキング業務」と「日次棚卸業務」に関しては、次のような成果が上がっています。
バーコードスキャナを利用することで、誤ピッキングはこれまで以上に、確実に防げるようになりました。導入検討時は端末を使った作業に対して不安視する声もありましたが、今では「紙には戻れない」、「スキャナが使えないと逆に不安」という状況になっています。
次のようなタブレット端末ならではの使い勝手の良さが、作業の効率化に貢献しています。
ピッキング作業が平準化され、誤ピッキングを防ぐための再チェックも不要になったので、作業時間が大幅に短縮されました。
また、以前は何十枚もの紙のリストを出力して仕分けし、倉庫に持って行き、各作業者に配付していましたので、繁忙期には、締め切りごとに「出力待ち」の時間が発生することがありました。タブレット端末の導入後は、そのようなことはなくなり、締め切り後すぐに作業を開始できるようになりました。
ピッキングリストや棚卸に必要な「紙」が不要になり、作業完了後の保管や管理の手間も大幅に軽減されました。出荷した商品についての問い合わせや監査などにも、迅速に対応できる体制が整い、「紙」自体や印刷にかかるコスト、保管スペースも不要になったので、大きなコスト削減効果も見込まれます。
日次棚卸業務において、万が一、在庫数に差異があった場合は、その場で出荷データを確認することができるようになり、迅速な対応を図れるようになりました。以前は、事務所に連絡して調べてもらわなければならなかったので、時間と手間がかかっていました。
まずはタブレット端末を用いた作業を確立することを優先に取り組んできましたので、まだ成果と言えるような形にはなっていませんが、作業の進行状況はリアルタイムで把握できるようになっていますので、今後は分析や判断手法の確立と平準化に取り組んでいきたいと考えています。
「紙を使っているのと同じような手軽さや操作感には、徹底的にこだわりました」(河野氏)
日立物流ソフトウェアに業務の改善策を相談する中で、スマートデバイス活用の提案を受けたことが、タブレット端末を導入するきっかけとなりました。
正直なところ、私たちはITの専門家ではありませんので、「紙をなくそう」と考えても、私たちにはその手段がわかりませんし、実現するノウハウも技術もないのです。
日立物流ソフトウェアは、その点に関して私たちの要望を積極的にヒアリングして、業務の分析をした上で、既存のWMSへの変更も最小限に抑えた提案をしてくれました。
また、タブレット端末のコストと汎用性も導入の後押しとなったことは間違いありません。タブレット端末は専用端末やパソコンと比べると安価で、アプリによってさまざまな業務で併用・転用ができるので、コストパフォーマンスが高いと考えました。
反対意見などは少なく、タブレット端末に対する抵抗感のようなものは心配していませんでした。
一方、導入効果を高めるため、紙を使っているのと同じような「手軽さ」や「操作感」にはこだわりました。そのため紙の帳票と同じような帳票イメージを表示することや、サクサクと動くパフォーマンスという点に関しては、納得するまでさまざまな要望を伝えました。
適用業務としては、さらに「入庫計上業務」や「データエントリ業務」にも活用したいと考えています。
また、導入のねらいでも話をした通り、各業務で得られたデータを分析して、「倉庫業務全体の最適化」に取り組んでいきたいと考えています。
まだ完成形ではあありませんが、現在、当倉庫の業務を分析した上での最適化には取り組んでもらっていますので、今後は、ほかの倉庫や業務など外部で成果を上げているソリューションを取り入れた改善策やさらなるスマートデバイス活用の提案に期待をしています。
また、WMSやアプリの開発のみならず、無線LAN環境の構築や本社に設置しているWMSサーバとの接続に関するネットワークのチューニングなど、ワンストップで対応してもらえるので、とても助かっています。頼りにしていますので、今後も、これまでと変わらない対応に期待しています。