タブレットピッキングを導入したことで誤ピッキングがなくなりました。
その上、作業員のスキルや経験に関係なく、生産性を10%向上させることができました。
タブレットピッキングシステム
写真右より、株式会社日立物流 西日本営業本部 西大阪営業所 所長 岩村 賢崇氏、
同本部 同営業所 第一倉配係 係長 西口 和志氏
日立物流ソフトウェアは、WMS(倉庫管理システム)を
中心に日立物流グループが提供する3PL業務の一翼を担っています。今回は、タブレットピッキングの導入により、倉庫業務の生産性向上を実現した事例を紹介します。
* 取材時期 2015年6月
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。
* 2023年4月1日付で、日立物流はロジスティードへ商号変更しました。
* 2023年4月1日付で、日立物流ソフトウェアはロジスティードソリューションズへ商号変更しました。
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日立物流 西日本営業本部 西大阪営業所の外観
日立物流では、物流センターの設計から、運営、配送計画やシステムの手配、さらには物流最適化に向けた分析などを、ワンストップで実現する提案型の3PLソリューションを実践してきました。
そのプロセスやコンセプトはもちろん重要ですが、お客様から結果として求められるのは、迅速かつ正確、そしてローコストなオペレーションです。
そのため、倉庫業務の効率化と最適化を実現する、あらゆる標準化や機械化を進めています。近年は、これまでの手法では改善や効率化が難しかったイノベーションを実現するため、特に情報システムやデジタル機器を活用し、IT化やスマート化にも積極的に取り組んでいます。
その通りです。今回のケースでは、タブレットピッキングのほかにも、デジタルピッキングシステムも導入しており、全体の出荷量の約20%から30%をタブレットを使ってピッキングしています。
2013年9月から利用を開始して、最初は数台のタブレット端末で運用していましたが、現在は、約40台のタブレット端末を導入しています。
タブレットピッキングの作業手順は次の通りです。
タブレットピッキングの作業風景
「作業効率の向上と誤ピッキングを防ぐ施策としてタブレットの活用を提案しました」(岩村氏)
いいえ、日立物流側からの自主提案となります。 タブレットピッキングは、単にリストピッキングで使う「紙」がタブレット上にデータとして表示されるだけではなく、作業効率の向上と誤ピッキングを確実に防ぐ施策としてお客様に提案をしました。
今回タブレットピッキングを導入したお客様の場合、取り扱い製品や運営体制に次のような特徴があり、 効率的にピッキングができるよう短期間で倉庫内の配置を変更しながら対応をしてきました。
そのため、作業者の慣れやスキルによって生産性にムラが発生しやすく、人的なミスによる誤ピッキングの可能性を排除するのも容易ではありませんでした。
作業者のスキルや経験に依存することなく誤ピッキングを確実に防ぎ、不特定多数のパートタイマーやアルバイトを即戦力化する仕組みとして、タブレットピッキングの導入を進めました。導入のねらいやポイントの詳細は、次の通りです。
誤った商品のバーコードを読み込んだ場合、タブレット端末の画面に「エラーメッセージ」が表示されるようにすることで、誤ピッキングを防ぐことができます。また、ピッキングが済んだ商品の消し込みが確実にできるので、漏れや抜けがなく確実にピッキング作業を完了させることができます。
上下オリコンごとにピッキング数量が色分けされて表示されるようにすることで、だれでも正確にマルチピッキング(複数店舗の選択)ができるようになると考えました。
誤ピッキングを確実に防ぐことができるようになれば、将来的にはピッキング後のPOS検品工程を簡略化、もしくは省略化するというねらいもありました。
タブレット端末であれば紙よりも視認性が良く、指先で必要な箇所をタッチするだけなので、だれでも直感的に操作できます。作業状況や作業指示を色分けしたり、わかりやすく表示してナビゲーションすることも容易なので、スキルや経験のない作業者でも、ミスを防ぎ確実に作業できるようになると考えました。
タブレット端末はノートPCなどと比べてコンパクトで、バッテリーも長持ちします。標準機能で無線LANや近距離無線通信規格に対応しており、システムやバーコードリーダとも無線通信できるので複雑な配線も不要です。そのため、カートへの設置や取り外しも用意で、作業の邪魔にもなりにくいと考えました。
作業実績データがそのまま残るので、作業者ごとの作業時間や適性などを分析して、さらなる作業の効率化や人的リソースの配置の最適化などにつなげることができます。これまで経験やカンに頼ってきた分析を科学的に実践することで、さらなる改善策の立案やリソースの最適化を図れるようになると考えました。
PCなどと比較すると安価なので、タブレット端末であれば必要数を導入することも容易で、負担も抑えられます。また、システム側もタブレット制御用PCを1台、無線LANのアクセスポイントを1台設けるだけで済むので、初期投資のコスト負担も最小限に抑えられます。
将来的にはピッキングだけでなく、入庫や検品、棚卸といったほかの業務や作業にも活用することができると判断しました。
これまで毎日のピッキング作業で大量に消費してきた「紙」を大幅に減らし、グリーンロジスティクスの促進にもつながります。倉庫業務におけるペーパーレス化は、日立物流グループにおける環境対応に止まらず、お客様の環境経営にもつながると捉えています。
「未経験者へのトレーニング時間も半分以下で済むようになりました」(西口氏)
誤ピッキングを確実に防ぎ、作業者による生産性のムラが解消されました。その結果、全体で約10%の生産性向上を実現できました。
また作業手順がシンプルなため、トレーニングにかかる時間が半分以下で済むようになりました。未経験者でもすぐに実作業に入ってもらえるようになりました。
ソフトウェアの開発を含めゼロからのスタートでしたので簡単な作業ではありませんでしたが、日立物流ソフトウェアが設計から機器の手配、導入時のトレーニングまで、全面的にサポートをしてくれたので安心して導入を進めることができました。
特に、視認性や色分けなど現場から上がってきた要望にも柔軟に対応してくれたので、使いやすく、作業効率を上げることができたと考えています。
また、タブレット端末を台車に取り付けるパネルは作業中に外れてしまうことなく、充電のため手軽に設置も取り外しもできるよう色々と工夫しました。このような工夫や改善は、日常茶飯事ですので苦労ということではありませんが。
システムは安定稼働しており取扱量もさらに増えると思いますが、台数などは現状維持で対応できると考えています。ただし、改善点はあると思いますので、当業務の関係者だけでなくほかの業務やほかの倉庫の管理者などの意見やアイデアなども取り入れ、さらにシステムを進化させて効果を高めていきたいと考えています。
また、拡張性という点に関して、導入のねらいでも話をした通り、入庫や検品、棚卸といった作業へのタブレット端末の展開を検討しています。
お客様の要望や物流の条件は日々変化しています。その変化や要望を先取りしながら、3PLとしてお客様のビジネスに貢献していくのが私たちのあるべき姿です、 ITの活用やスマート化は、その最重要キーワードと言っても過言ではありません。日立物流ソフトウェアには、物流に特化したITの専門家として大いに期待しています。