「倉庫管理」「配車管理」「物流費計算」の3つの機能を
統合したシステムで、乳製品の在庫管理の精度向上と
トレーサビリティの確立を実現しました。
「倉庫管理」「配車管理」「物流費計算」の3つの機能を統合したシステムで、乳製品の在庫管理の精度向上とトレーサビリティの確立を実現しました。
物流センター管理システム(WMS)
配車管理、物流費計算
(写真左より) よつ葉乳業株式会社 経営企画室 情報センター 次長 関崎 佳行氏、主任 小原 祐斗氏、
よつ葉物流株式会社 事業部 広域流通課 主任 石黒 俊行氏、
よつ葉乳業株式会社 営業統括部 営業グループ 課長 高木 勝利氏、
経営企画室 情報センター 主任 原口 昌樹氏(インタビューのみ)
牛乳や乳製品の製造・販売を手掛ける、よつ葉乳業株式会社(以下、よつ葉乳業)では、ロジスティードソリューションズの物流センター管理システム「ONEsLOGI/WMS(※)(以下、ONEsLOGI)」をベースに開発した物流統合管理システムを導入。北海道の工場から全国の倉庫へ幹線輸送する物流の最適化に取り組んでいます。ONEsLOGIを導入した経緯と効果について紹介します。
※Warehouse Management System
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「おいしく安全で高品質な牛乳・乳製品をお届けしています」
(よつ葉乳業 関崎氏)
よつ葉乳業は、「適正乳価の形成」と「酪農経営の長期安定」という社是のもと、「自分たちの手で、より良い牛乳と乳製品を消費者の皆様にお届けしたい」という北海道の酪農家の思いから、農民資本により設立された乳業会社です。1967年の設立以来、北海道内の酪農家から集められた生乳を原料に、牛乳、バター、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品を製造・販売しており、年間の買入乳量は80万トン(2022年度実績)におよびます。
北海道の酪農家と全国のお客様との架け橋として、「北海道のおいしく安全な乳製品をお届けしたい」という、まっすぐな思いで、製品づくりを行っています。北海道の生乳生産基盤の維持・発展に貢献していくという使命を持って事業を展開しています。
「『ONEsLOGI』をベースに開発した物流統合管理システムを利用しています」
(よつ葉乳業 高木氏)
当社では現在、ロジスティードソリューションズの「ONEsLOGI」をベースに開発した物流統合管理システムを、本社、全国の物流拠点および営業倉庫で利用しています。物流統合管理システムは、「倉庫管理」「配車管理」「物流費計算」という3つの機能を統合したシステムとなっています。
当社では、商品によって異なるところもありますが、大半の商品に関して、北海道に設けている複数の工場で生産しており、北海道から全国各地の物流拠点へ毎日輸送しています。その入荷・入庫、在庫・棚卸、出庫・出荷に関する物流情報を、倉庫管理機能を用いて管理しています。
これらの基本的な倉庫管理機能に加えて、当社では牛乳や乳製品など厳格な管理が求められる食品を取り扱っているため、賞味期限や鮮度などを管理する特有の管理機能やお客様の細かな要望に対応するための独自機能なども倉庫管理システムに組み込んでいます。
物流センターの様子
物流センターの様子
文字通り製品移送・輸送に関する配車などを管理する機能となりますが、合わせて、独自に開発したトレーラへの商品の積み付けを管理する、とても重要な機能を搭載しています。
北海道から全国に届けるために、各地の物流拠点へ幹線輸送を行い、各物流拠点から店舗へ配送しています。幹線輸送は20トンから24トンのトレーラを用いており、1台の車両で複数の物流拠点に輸送することもあるため、トレーラ内のロケーションが重要な管理ポイントになります。当然、複数の商品を混載しなければなりませんが、トレーラの前後左右、そして商品を積み重ねる上下のバランスを考慮して、トレーラ内のロケーションを決める必要があります。さらに、物流拠点の納品順番も考慮して先に卸す商品はトレーラの後方に積み付けしなければならず、その上で積載率を上げるロケーションを設定していかなければなりません。
現時点では、牛乳だけで1日あたり約15便の幹線輸送を行っています。各便における積載品目とその製造順番や出発時間などの情報を考慮し、積み付けの最適化と標準化を図るため、荷受け側への情報共有においても積み付け管理はとても重要な業務となります。
配送や倉庫における運賃計算や請求・支払情報など、物流に関連するコストを管理・計算する機能です。
物流統合管理システム導入前は、汎用機により自社でスクラッチ開発した基幹システムの入出荷管理機能を、改修を重ねながら20年以上利用してきました。入出荷管理機能以外の業務システムや基幹システムもほぼ同様の状況で、新たな機能を追加するとともに運用負荷やコストの削減を図るため、段階的にオープン系システムへの切り替えを進めてきました。入出荷管理機能に関しては、複数拠点で管理している在庫データの一元的かつリアルタイムでの管理を実現するため、大がかりなシステム刷新となりました。
賞味期限管理や車両への積み付けなどの業務は、管理帳票などを用いて手作業によって管理していたため、業務が属人化しておりましたが、システム化することにより、業務の標準化や効率化を実現しました。
「コストパフォーマンスにも優れ、機能も充実しているONEsLOGIを採用しました」
(よつ葉乳業 小原氏)
今回、多拠点で利用するということもありますが、サーバを調達するとなるとデータセンターも確保しなければならず、ハードウェアの保守期限なども気にしなければなりません。初期導入対応はもちろん、導入後のランニングに必要となる負荷やコストを抑えることができ、システム環境も冗長化されておりBCP対策の面でもメリットが多いことから、自社で既に利用しているクラウド環境下に導入可能なWMSを採用するという方針は固めていました。
また、機能面に関して、物流機能をゼロから開発するとなるとコストや時間がかかります。基本的な物流業務の標準化と効率化を促進するため、パッケージソフトの機能を利用するとともに、独自の機能に関してはカスタマイズで対応できるシステムの導入を優先して検討しました。
ONEsLOGIに関して、他のシステムやベンダーとも比較検討しましたが、次のポイントから採用を決めました。
「誤出荷を削減することができました」(よつ葉物流 石黒氏)
複数拠点で管理している在庫データを一元的かつリアルタイムで管理できるようになったことで、在庫管理の精度向上とトレーサビリティが確立したというのが、導入効果のひとつだと捉えています。
たとえば、物流統合管理システムを導入する以前は、どれぐらいの量で、どういった賞味期限の在庫があるのかを、営業倉庫から上がってくる在庫表を転記して、手作業で出荷履歴の資料を作成していました。そのため、資料が完成したときにはすでに数週間が経過しており、管理水準は低い状況にありました。現在では、特定の賞味期限のものが、どの倉庫にどれだけ納品されたのか、在庫はどのくらいあるのかという情報を、スピーディーかつ正確に把握できるようになりました。
また、これまではピッキングミスなどにより誤った幹線輸送便に商品を積んでしまうこともあったのですが、物流統合管理システムの導入に合わせてハンディターミナルを用いてピッキング作業を行うようになり、出荷履歴も正確に管理されるようになったことで、誤出荷は削減されました。
ハンディターミナルでの
ピッキング作業の様子
その他、拠点間移動中の在庫も管理し、引当も可能となっています。以前は、倉庫に納品されてからすぐにお客様へ納品しなければならないような場合、各倉庫の作業員に任せて対応しており、その作業はブラックボックス化していました。今では、どの便の、どのパレットに、どのような賞味期限の商品が、いくつ入荷されるかを事前に確認できるので、幹線輸送便が到着後、スムーズに配送車へ積み替えをして納品できるようになっています。
積み付けに関して、特殊な業務なため、完全な自動化には最初からこだわっておらず、職人的な技をいまだに必要としている業務となります。しかし、これまで特定の作業者に依存してきた作業が可視化され、効率化されたと同時に、積載率管理の改善にもつながっています。
物流費計算機能によって、運賃計算業務がスピードアップし、経理システムへ物流費のデータをそのままインポートできるようにもなりました。そのため、コスト管理業務が効率化されています。また、運賃データが蓄積するとともに、出荷データと紐付けて集計・分析できるようになったため、物流費が可視化され、より早く、正確な運賃の管理資料を経営層など必要な部署へ報告できるようにもなりました。
物流統合管理システムの導入により、俯瞰的に見れば、物流業務の改善・効率化および管理の精度向上につながっています。また、これまで対応していなかった機能も追加され、管理項目も増え、より精緻で厳格な物流管理ができるようになりました。一方で、一部担当者の負荷が増加したり、紙の使用量を削減できなかった業務もあります。そのため、さらなる業務の見直しや改善に取り組み、効率化やコスト削減を進めて行きたいと考えています。このような改善や見直しは、物流統合管理システムを導入して業務の標準化を進めたことで、取り組みやすくなりました。
システムの開発にあたり、基本的な物流機能はもちろんですが、賞味期限管理や車両への積み付け管理、拠点間移動中の在庫引当など、複雑な要件に対しても柔軟に対応してもらえたため、安心してシステムの導入・検討を進めることができました。また、システムの稼働後も、当社の業務スタイルに合わせて、北海道内にシステム保守対応拠点を新たに整備してもらえたことにも大変感謝しています。
これからもシステムの機能や性能のさらなる向上はもちろんですが、物流の専門家としての知見や経験に基づいた、当社業務の改善や効率化、コスト削減につながる提案にも期待しています。
* 取材時期 2023年7月
* お客様の所属部署、役職等は取材時のものです。