40~50秒かかっていた検品作業が、数秒で済むようになりました。
商品を搭載したカートの映像が残るので、配送先からの
問い合わせに対しても迅速に対応できます。
40~50秒かかっていた検品作業が、数秒で済むようになりました。商品を搭載したカートの映像が残るので、配送先からの問い合わせに対しても迅速に対応できます。
映像検品認識装置
(写真左より、株式会社日立物流関東 関越営業部 多摩営業所 Ⅰ期第一保管係 商品管理員 薄葉 徳子氏、
株式会社日立物流 東日本統括本部 首都圏営業本部 関越営業部 事業サポートG 川﨑 聖之輔氏、
株式会社日立物流関東 関越営業部 多摩営業所 副所長 木村 嘉光氏、
株式会社日立物流関東 関越営業部 多摩営業所 Ⅰ期第一保管係 係長 島崎 真行氏)
企業の物流パートナーとして、安全・迅速・効率的な物流サービスを展開する株式会社日立物流関東(以下、日立物流関東)では、日立物流ソフトウェアが株式会社日立物流(以下、日立物流)と共同で特許を取得した「映像検品認識装置」を導入。出荷検品作業の省力化と時間短縮を図っています。その経緯と効果について紹介します。
* 取材時期 2019年7月
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。
* 2023年4月1日付で、日立物流関東はロジスティード関東へ商号変更しました。
* 2023年4月1日付で、日立物流ソフトウェアはロジスティードソリューションズへ商号変更しました。
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日立物流関東では、関東・甲信越・東北南部地方の1都8県に41拠点を設け、次の5つのサービスを軸に総合的なシステム物流サービスを展開しています。
多摩営業所に設置されている映像検品認識装置
現在、多摩営業所(東京都東村山市)における食品会社様の仕分け・配送業務において、映像検品認識装置を用いて出荷前の最終検品作業を行っています。装置の導入台数は1台となります。
出荷先ごとに仕分けされた商品が搭載された4輪カートを、映像検品認識装置前の所定の位置に移動させた後、次の手順で操作します。
検品結果が「OK」の場合は、検品結果の情報が自動でサーバーに登録されます。
検品結果が「NG」の場合は、検品情報は登録されず仕分けをやり直すことになりますが、スクリーン上にはどのラベルが誤っているのかが表示されるのですぐにわかります。
このように、難しい作業や複雑な作業ではないので、特別なトレーニングなどせずとも誰でもすぐに使えるようになります。
「繁忙期でも、通常時と変わらない体制で、検品作業ができるようになりました」(木村氏)
各商品に添付されているラベルを目視で確認して、出荷先が合っているかどうか、全体の個数が合っているかどうかをチェックしており、カート1台あたりの作業時間は40~50秒ほどかかっていました。
映像検品認識装置を使えば、1台あたりの検品作業は数秒で済みます。さまざまな業務の改善や作業の効率化に取り組んできましたが、これだけ作業時間を大幅に短縮できることは少なく、期待以上の成果を出すことができました。
その結果、通常時に4人体制で作業していた1日約8,000箱を出荷する作業が、2人もしくは1人体制で対応できるようになりました。1日10万箱以上を出荷することもある繁忙期には、手が空いている作業員が総出で対応することもありましたが、今は通常時と変わらない体制で対応できます。
また、作業スピードだけでなく精度も向上しています。目視による検品はヒューマンエラーによるミスや漏れを排除しきれませんでしたが、そのようなリスクは解消され、検品エラーによる誤出荷が発生することはなくなりました。
バーコード認識用に2台(上下)と証跡画像用に1台(真中)のカメラが搭載されている。
商品を搭載したカートの画像が残るので、配送先からの問い合わせに迅速かつ確証を持って対応できるようになりました。これまでは問い合わせが入っても検品完了の作業票しか残っていませんでしたので、調べるのも手間がかかりヒューマンエラーを完全に否定する証跡はありませんでした。
一方、画像が残っていれば、仕分け時、もしくは出荷時の問題なのか、配送時や配送先における問題なのかを素早く切り分け、回答することができます。最近では、検品時の画像を見せてほしいという問い合わせが入ることもあり、画像で残るというメリットは想像以上のものでした。
操作はシンプルで、作業待ちのカートが数多く並んでストレスを感じるような場面もなくなったと聞いています。広く捉えれば、労働環境の改善という視点からも導入効果があったと考えています。
開発の途中段階では、撮影条件やカメラの精度などの影響で正確に認識できないということもありましたが、結果的には撮影用ライトを配置し、2台のモノクロ映像カメラと1台の証跡画像用のカラー映像カメラ、計3台を搭載し、認識精度の向上を図ってもらいました。実運用を開始してから誤認識が発生したことはありません。
「検品作業以外にオペレーションを変えた作業などはありませんでした」(川﨑氏)
常日頃から、安全・迅速・効率的な物流サービスを展開するための改善や新しい技術の活用には、積極的に取り組んでいます。特に最終検品作業が滞れば、それまでの作業が効率化されていても、成果は半減されてしまいます。
また、配送トラックを待たせることになれば店舗への配送に遅延が発生してしまいかねません。そのため、通常時はもちろんのこと、繁忙期に出荷検品作業の遅れが発生するリスクは重要な課題となっていました。
ただし、正直なところ、“映像検品認識装置で出荷検品作業の作業効率を上げること”を、最初からねらっていたわけではなく、原型となる装置を見たとき検品作業に応用できるのではないかと考えたのがきっかけとなりました。
そのため、現在の形や性能になるまではさまざまな見直しが必要でしたが、日立物流と日立物流ソフトウェアが私たち現場からの要望に対して真摯(しんし)に対応してくれたことで、実際の現場における活用を前提とした優れた装置ができたと考えています。
使い勝手と、精度と、スピードに関するものが基本的な要望となります。言い換えれば、誰でも簡単に、確実に、迅速に作業ができる装置にしてほしいということになります。ただし、それを実現するのは容易なことではなく、結果的に特許(*1)を取得するレベルの工夫があり実現した装置と聞いています。
出荷シールにバーコードを印字する必要はありましたが、最終検品作業以外にオペレーションを変えた作業などはありませんでした。
出荷前の検品作業に関しては、追従運搬ロボット「サウザー(THOUZER)」などとの連携を図り、検品後に出荷場へとカートを自動で運ぶような仕組みも考えていきたいと思います。
映像検品認識装置に関しては、ソフトウェアを応用することでほかの検品作業にも活用できると考えています。
また、現段階では現実的ではないかもしれませんが、装置の移動も可能かと考えているので、時間帯によって違う場所で利用するというようなことも考えています。
IoTやAIといった先進的な技術やソリューションを積極的に活用し、倉庫管理業務のスマート化に取り組んでいきたいと考えています。日立物流ソフトウェアはその重要なパートナーとして頼りにしており、映像検品認識装置に限らず、今後も、物流業務を最適化するための提案やソリューション提供に期待しています。
発明名称 | 映像検品認識装置 |
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特許番号 | 特許第6395895号(P6395895) |
登録日 | 平成30年9月7日 |
特許権者 | 日立物流ソフトウェア株式会社、株式会社日立物流 |
特許の概要 | 画像処理を利用した検品装置です。 台車に検品対象である商品を複数積載した状態で、全体を撮像するだけで検品作業を完了することができます。 |
映像検品 システムに ついて |
上記特許技術を採用し、日立物流ソフトウェア・日立物流が共同で開発した、一括で検品を行うシステムです。 台車に積まれた複数の検品対象の全体画像からラベル情報を読み取り、さらにこのラベル情報からバーコード部分のみの画像を高精度に読み取ることで、高速かつ正確な情報処理を実現しました。 検品結果は即時にシステムモニター上に表示されるので、検品作業の効率化を図ることができます。映像検品システムは、お客様の商品やニーズに合わせオーダーメイドで対応します。 |