物流革命の一環として、部品供給体制の強化とコスト削減をONEsLOGIで実現しました。
物流センター管理システム(WMS)
(写真左より、ローレルバンクマシン株式会社 つくば事業所 営業企画統括部 物流管理部 部長 力石 寿武氏、
営業企画統括部 物流管理部 つくば物流センター 課長 小林 昌弘氏)
通貨処理機メーカー、ローレルバンクマシン株式会社(以下、ローレルバンクマシン)では、物流改革の一環として保守部品供給体制の強化と効率化を図るため日立物流ソフトウェアの「ONEsLOGI / WMS(以下、ONEsLOGI )」を採用した。導入の経緯と効果について紹介します。
* 取材時期 2016年9月
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。
* 2023年4月1日付で、日立物流ソフトウェアはロジスティードソリューションズへ商号変更しました。
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写真左/紙幣硬貨入出金機「Smart-R」、
写真中央/納金機「LDS-400シリーズ」、
写真右/紙幣硬貨入出金機「CBM-30」(写真提供:ローレルバンクマシン)
ローレルバンクマシンは、1946年の創業以来、通貨処理機の専門メーカーとして、国内のみならず世界の通貨処理業務の省力化や効率化を実現する製品やソリューションを提供してきました。金融機関に限らず、官公庁、流通業界、警備会社、病院、鉄道会社、娯楽レジャー施設など、多種多様な業種・業界のお客さまに当社の製品をご利用いただいております。
おかげさまで2016年に創業70周年を迎えますが、その歴史に裏付けられた経験と最新の技術で、さまざまな日本初の技術や製品を数多く開発・提供してきました。また、環境問題への関心が高まる中で、21世紀に生き残る企業をめざし、リサイクルやグリーン調達等、環境に配慮したモノ作りに取り組んでいます。
さらに、お客さまが安心して機械をお使いいただけるよう、全国90拠点以上を結ぶサービスネットワーク網を構築し、地域に密着した保守サービスを提供しています。そして、お客さまから信頼される製品やサービスを提供するべく、営業改革や物流改革にも積極的に取り組んでいるところです。
茨城県つくば市に設けている「つくば物流センター(以下、物流センター)」における、保守部品の入出庫管理業務にONEsLOGIを利用しています。基幹システムから受け取った入出荷情報をONEsLOGIで出力し、ハンディターミナルを使って入庫検品およびピッキング作業を行っています。
物流センターは2015年に開設した新しい物流拠点です。当社製品の保守部品を保管・管理し、全国の支店や営業所へと配送していますが、ユニット製品の修理・再生を行うリペアセンターをはじめ、名刺、カタログ、取扱説明書、マニュアル類の社内用印刷センターもつくば事業所内に併設しています。
物流センターの開設と同時にWMSの利用も開始する予定だったのですが、同時に新しいシステムを導入すると現場が混乱する可能性が高いと考え、開設時は旧来の方法で入出庫作業を行い、新しい環境に慣れた2015年12月からONEsLOGIの運用を開始しました。
入出荷数や作業者数等の情報は次の通りです。
項目 | 概要 |
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取り扱い部品点数 | 約28,000点 |
入荷量 | 約380,000点(利用開始より、約9カ月間累計) |
出荷量 | 約280,000点(利用開始より、約9カ月間累計) |
対象地域 | 全国の支店・営業所など自社拠点(全国に約90拠点を展開) |
作業人数(入出庫) | 5名(正社員2名、パート社員3名) |
建屋面積 | 3247㎡(2階建て) |
稼働開始 | 2015年12月 |
写真左/つくば物流センターにおけるピッキング作業の様子、写真右/倉庫の様子
「ONEsLOGIの利用を開始して、すぐに成果が現れました」(力石氏)
これまでは長年引き継いできた使い慣れたスペースにおいて、業務に精通した社員が慣れた方法で作業をしてきました。しかも、ハンディターミナルとWMSの導入によりオペレーションが大きく変わり、パート社員も活用するとなると、すぐに大きな成果を望むのは難しいかと思っていました。
しかし、いざ使い始めるとそのような懸念は取り越し苦労で、すぐにさまざまな場面で成果が現れ始めました。今ではシステムがないと入出庫作業ができないと言っても過言ではない存在となっています。
まだ、あらゆる場面で改善や効率化の余地は残っていると思いますが、現時点で次のような成果が上がっています。
以前は、入出庫リストと品目番号を目視で確認していました。似たような形状、似たような品目番号の部品も多く、取り違いのリスクが内在していました。また、それを防ぐための確認作業にも手間と時間がかかっていました。
ハンディターミナルを導入したことで、入庫時の検品ミスや出庫時のピックミスのリスクは解消されました。また、人手による作業では1伝票あたり最大で30分以上かかっていたピッキングが5分以内で済むようになりました。
これまでは入出庫作業の効率化を図るため、部品の種類ごとに保管場所と主となる担当者を決めていました。各作業者の経験も豊富で能力も高かったのですが、ロケーションが固定されているため入庫作業が煩雑で、担当者が不在だとピッキング作業が遅れたり、必要な部品が見つからなかったりという属人化によるリスクが内在していました。
今では入庫時に、バーコードでロケーションと入庫品をひも付けできるようになったのでフリーロケーションで管理できるようになり、入庫作業が大幅に効率化されました。出庫時も、部品の種類や保管場所を知らなくてもピッキングリストに従えば確実にピッキングできるようになりました。そのため、これまでは社員だけで作業を行っていましたが、パート社員でも迅速かつ確実に入出庫作業ができるようになりました。
棚卸作業も大幅に効率化されました。部品の担当者でなくても、これまでの約半分の期間で棚卸作業を終えられるようになりました。また、循環棚卸にもスムーズに対応できるようになりました。
入出庫のミスがなくなったことが関連していると分析していますが、棚差異は約1/10に改善されています。まだONEsLOGIを使い始めて1年経過していないので、使い続けていくことで棚差異は限りなくゼロに近づけると考えています。
在庫情報が精緻化され、実入出庫情報をリアルタイムかつ容易に把握できるようになり、在庫切れの部品のオーダーが入った場合でも、物流センターが責任を持って拠点に在庫がないかを調べられるようになりました。そのため、拠点間の部品のやり取りが不要となり、各拠点で保管している在庫も圧縮されつつあります。
基本的にオーダー受け付けの締め切り時間はこれまでも設定していませんでしたが、配送業者の集荷時間に出荷の準備ができなければ当日出荷はできませんので、これまでは集荷に間に合わせるため手の空いている者が出荷作業をヘルプしたりすることもありました。
ピッキングを正確かつ迅速にできるようになったことで、最終の集荷18時ぎりぎりまでオーダーを受け付けることができます。また、18時に間に合わない場合でも、19時までに配送業者の営業所に持ち込めば当日出荷ができます。人員などを追加することなく、このように緊急のオーダーにも柔軟に対応できるようになったのも、重要な導入効果の一つだと捉えています。
「パッケージソフトを活用して、低コストかつ短期間にシステムを導入し、業務の標準化を図ろうと考えました」(小林氏)
すでに話をした通り、物流センターの開設が契機となったわけですが、単に物流センターを作ったからWMSを導入したわけではありません。そもそも物流センターは、部品供給体制の強化とコスト削減はもとより、ローレルグループ全体の物流効率化を目的として建設された事業所であり、入出庫をつかさどるWMSは物流センターの要となる存在と言っても過言ではありません。
入出庫業務に必要な機能が網羅されているパッケージソフトで、カスタマイズが可能なものであることがWMSを選定する上で第一の要件となりました。
これまで簡易な在庫管理システムは利用していましたが、本格的なWMSを導入・運用した経験がなく、これまでの業務をトレースしても意味がありません。むしろ最適化された業務が反映されているパッケージソフトを採用することで、低コストかつ短期間にシステムを導入し、業務の標準化を図ろうと考えました。
一方、どうしても必要な機能は追加できるよう、カスタマイズが可能なことも要件となりました。
例えば、通常のシステムでは拠点での発注の際に引き当てる在庫がないと、そもそも発注ができないようになっていると思います。ONEsLOGIも標準機能では同様です。
しかし、私たちの場合は在庫がなくてもまずは受注して、そのあと各拠点に在庫がないか、どこからか入手できないか、最大限、社内ネットワークを駆使して確保する手配をします。このように細かな機能などのカスタマイズをしています。
ONEsLOGIはニッセイコムから提案をしてもらいました。ニッセイコムはそれまでにも、さまざまなソリューションを紹介してくれたパートナー企業です。他にも導入を検討しているWMSもあったのですが、システムインテグレータとしてのニッセイコムと日立物流ソフトウェアによる全体的な提案内容が優れており、自信を持ってONEsLOGIを提案してくれたこと。そして、日立グループの製品であること。導入実績が豊富なことなどを評価しました。
最終的には、ONEsLOGI導入によるコスト削減効果を試算して、数年間の運用で投資を回収できることを確認し、導入を決めました。
単にWMSを導入しましょうという提案ではなく、物流センターの業務全般の業務効率化、省力化、最適化を見据えた内容で、タブレット端末の活用や将来的なロードマップなどが盛り込まれていました。物流センターは単に「もの」を流す倉庫ではなく、戦略的ロジスティクスを実践する物流改革の核となる拠点として捉えてくれたので、パートナーとして信頼できると判断しました。
入出庫業務のさらなる効率化を図るための取り組みはもちろんですが、入出庫データを分析してロケーションの最適化や生産管理システムと連携した在庫の最適化を図っていきたいと考えています。また、タブレット端末を活用したペーパレス化にも取り組んでいく予定です。
さらに今後は、保守部品だけでなく、製品や修理品、消耗品、カタログ、販促物など、拠点に配送するものはすべて物流センターに集約し、ONEsLOGIで管理することで、管理コストや配送コストなどの削減や適正化、そしてローレルグループ全体の物流効率化を図っていきたいと考えています。
ONEsLOGIの活用イメージ
ONEsLOGIの活用イメージ
今回、スケジュールに余裕がない中、日立物流ソフトウェアは丁寧かつ、きめの細やかな対応をしてもらい感謝しています。今後も、ローレルバンクマシンにとって理想的な入出庫環境を実現するための情報提供や提案に期待しています。