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アシックス物流株式会社 様

物流コストやシステム拡張・追加にかかるコストを算出し、
ROIを見極めながらシステム投資の判断ができるようになりました。
将来的には物流KPIの導入も検討しています。

物流センター管理システム(WMS)

写真左より、アシックス物流株式会社 取締役 システム担当 狩野 宏氏、システム部 部長 糟谷 吉章氏、
システム部 システム課 課長 坂口 章氏

アシックスグループの物流子会社「アシックス物流株式会社(以下、アシックス物流)」では、30年来使い続けてきたWMS(物流センター管理システム)を刷新。日立物流ソフトウェアの「ONEsLOGI WMS」を採用した。導入の経緯と効果について詳しく話を伺いました。

* 取材時期 2014年10月
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。
* 2023年4月1日付で、日立物流ソフトウェアはロジスティードソリューションズへ商号変更しました。


アシックス物流の事業概要

アシックス物流つくば配送センター アシックス物流阪神配送センター

アシックス物流つくば配送センター
(写真上、写真提供:アシックス物流)、および
阪神配送センター(写真下)

―― アシックス物流の事業概要についてご紹介ください。

アシックス物流は、株式会社アシックス(以下、アシックス)の全社的な物流業務を統括管理すると同時に、商品分離・拠点集約などにより物流の合理化を図るために設立されました。

現在は、兵庫県西宮市(以下、阪神)、茨城県つくばみらい市(以下、つくば)、福井県越前市(以下、北陸)の配送センターを中心に、国内に計5か所の物流拠点を設け、全国の量販店や百貨店、卸問屋、直営店などに向けて商品を出荷しています。

倉庫坪数は、外部倉庫を含め約33,000坪(月間平均坪数)。取扱量は約3,000万点(2013年度の実績値)となります。

「より良い物流サービスを、より少ない物流コストで実現する」ことを使命とし、マテハン機器を積極的に導入するなど、より早く、正確に、商品をお届けする体制を構築しています。

―― アシックスグループが3PL(3rd party logistics)などは利用せず、自社(グループ)オペレーションにより運営している理由とは。

当社はアシックスの100%子会社であり、取扱商品のほぼすべてがアシックスグループの商品となります。そのため、数字的な利益にこだわる必要がなく、その分をアシックスグループに還元することに主眼を置いています。

また、いわゆる「どんぶり勘定」にならず、物流原価を正確に把握できることや、情報共有によるスピーディかつ柔軟な対応ができることなども、倉庫業務を自社でオペレーションするメリットだと捉えています。

30年来使用してきたシステムを、パッケージソフトをベースに
機能を追加・拡張したWMSへと刷新

―― WMSの利用状況を教えてください。

30年来、自社でスクラッチ開発してきたシステムを、2012年度に日立物流ソフトウェアのWMSへと刷新しました。システムは、入出荷管理、検品、在庫管理、棚卸業務、物流コスト管理などを行う基本モジュール(パッケージソフト)をベースに、一部の機能をカスタマイズしています。カスタマイズに関しては、共通機能としてカスタマイズした機能と各センターで個別にカスタマイズした機能があります。

阪神、つくば、北陸のデータベースは事業所ごとに分けて管理していますが、システム(サーバ)はデータセンターで一元管理され、1つのWMSで運用しています。

アシックス物流における物流概要

アシックス物流における物流概要

アシックス物流における物流概要
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アシックス物流における物流概要

主なカスタマイズ機能

  • 在庫引き当てパターン別にピッキングリスト種別を変更
  • 基幹システムとの連携
  • 流通加工への対応

旧システムのレガシー化により表層化した、現場、運用、経営面における課題

―― WMSを刷新した経緯を教えてください。

今回WMSを刷新するまでは、30年以上、随時、機能の拡張・追加や改善を繰り返してきました。そのため、現場にとっても使い慣れた、使いやすいシステムであったことは間違いありません。

その一方、システムのレガシー化にともない、次のような課題が見られるようになってきました。

現場における課題
「パフォーマンスの低下」

取扱量・種類の増加やビジネス環境の変化にともない、繁忙期にシステムのパフォーマンスが追いつかないような場面が見られるようになってきました。

運用面での課題
「運用管理負荷・コストの増加と拡張性の欠落」

汎用機(メインフレーム)上でシステムを運用していたため、現在のオープン系システムと比べるとハードウェアやソフトウェアの拡張性に乏しく、新規・追加導入するのもコストが割高でした。しかも、30年という時間の経過にともない、属人化やスパゲティ化といった現象も見られるようになり、結果として、現場からの要望や大幅な拡張に対応できない場面が増えてきました。

また、 旧システムを使い続ければ、今後システムの維持・運用負荷がさらに増大することも懸念されました。配送や保管に関連するコストが増大する中、固定費削減策の1つとしてシステムの維持・運用コストの削減は重要な検討課題となっていました。

経営面での課題
「システムとしての将来性に対する不安」

アシックスグループとしてグローバルなビジネス展開が進み、基幹システムをはじめ様々なシステム環境が整備される中で、旧WMSがそのような変化に対応できるかどうか不安もありました。

ビジネス環境や物流に求められる価値の変化

取締役 システム担当 狩野 宏氏

「物流の『安全』『品質』『正確性』を高めていくことが、アシックスのブランドや価値を高めることにつながります」(狩野氏)

―― 「取扱量・種類の増加やビジネス環境の変化」とは、具体的にどのようなことでしょうか。

アシックスグループのビジネスが順調なため、単純に物量が増えているというのもありますが、スポーツシューズやアパレル、それらの関連商品は、1つの商品でも、色やサイズの種類が豊富だという特徴があります。近年では機能やデザインが多様化し、商品サイクルもスピードアップしてきました。さらには、アウトレット品など新しいカテゴリも出てきています。そのため、「種類」と「取扱量」は以前と比べものにならないほど増えています。

また、ビジネス環境の変化という点では、2つのポイントが挙げられます。1つは、取引先、要するに「出荷先の変化」です。以前は、卸問屋への出荷が中心でしたが、販売形態や購買形態の変化にともない、スポーツ量販店や直営店、通販、健康関連ショップなどとの取引などが増え、その比率は逆転しました。そのため、これまで卸問屋が担ってきた機能を配送センター側で対応するようになったり、セールやキャンペーンなどの実施に合わせて短期的に大量の商品を大量の配送先に発送しなければならない場面が急増しています。それに比例して、作業負荷も増えますので、より効率的な仕組みが必要となってきています。

もう1つの変化は、「物流に求められる価値」の変化です。言うまでもなく、物流では正確に商品を届けるというのは基本中の基本です。「正確」なのは当然で、当社ではそれと同様、もしくはそれ以上に「安全」や「品質」も重要だと捉えています。もともと関西地区においては、きめ細い対応が求められるという経験もあるのですが、販売現場との直取引が増加するのにともない、これまで以上に荷姿や配送先での取り扱いのしやすさなどが重要視されるようになってきました。そのため、物流における「安全」や「品質」へと徹底的にこだわることが、結果として物流の効率化やアシックスのブランドや商品の価値を高めることにつながると捉えています。

単純な入れ替えではなく、先進的なWMSの仕組みや技術を取り入れることも
相乗効果として期待

システム部 部長 糟谷 吉章氏

「マイグレーションでシステムを切り替える方法も検討しましたが、これまでの殻を破るためにもパッケージソフトを活用しようと決断しました」(糟谷氏)

―― 導入するWMSを選定したときの機能要件を教えてください。

機能面に関する要件はシンプルでした。1つは、既存の倉庫管理業務を変えることなく、基幹システムとの連携なども含めて旧システムの機能をすべて網羅すること。そして、もう1つは、旧システムでは対応できなかった機能を容易に追加できること、という2点です。

30年ぶりにシステムを刷新するといっても、長期間、業務を止めるわけにはいきませんし、取引先とのやり取りも変えるわけにはいきません。そのため、機能面では現場へのインパクトを最小限に抑え、取引先などへ迷惑をかけないようにすることが重要です。その上で、新システムへの切り替え時だけでなく、継続的に機能を追加・拡張できるというのが当社の希望でした。

さらに、最終的にはパッケージソフトをベースとしたシステムであることも要件となりました。実は、最後の最後まで旧システムのマイグレーションでシステムを切り替える方法も検討しました。しかし、マイグレーションであれば箱をすり替えただけで、これまでの殻を破ることはできないと判断し、多少の変化は受け入れることになってもパッケージソフトをベースにすることを決断しました。

―― 機能面以外の要件もあれば、教えてください。

物流や倉庫管理業務に関する知識や経験が豊富なベンダーが、サポートしてくれるシステムであるということも重要な要件でした。当社では、これまで自社でシステムを企画・開発・運用してきたため、まさに「井の中の蛙大海を知らず」というような状況でしたので、検知を広げ、優れた仕組みや先進的な技術を取り入れることも、新WMSの導入効果の1つとして期待したからです。

国内有数の物流会社である日立物流グループの経験や実績を評価

――日立物流ソフトウェアのWMSを選定した理由を教えてください。

日立物流ソフトウェアとしてはもちろん、国内有数の物流会社である日立物流グループとしての経験や実績を高く評価しました。商談を進める上でも、当社の要望や不安点を解消してくれる提案を積極的にしてくれたので、パッケージソフトをベースとしたWMSでも安心して構築を進められると判断しました。

また、日立物流ソフトウェアのWMSには、パッケージソフトとして基本的なルーチン業務機能が反映されているだけでなく、規模や業種に関わらず多種多様な倉庫管理業務を手がけてきたノウハウやベストプラクティスが集約されていること。さらにはカスタマイズに関しても、標準技術をベースとした自社開発のシステムなので、柔軟な対応が期待できることも評価しました。そのほか、コストやサポート体制も検討した上で、最終的に判断を下しました。

機能面、運用面、経営視点から見た新WMSの導入効果

―― 機能面、運用面、経営視点から見た新WMSの導入効果について教えてください。

1
機能面での導入効果

まず機能面に関して、システムのパフォーマンスや安定性が向上したことで、旧システムであれば遅延やトラブルが発生しかねないようなピーク時でも、システムは安定的に稼働するようになりました。実際、旧システムであれば乗り切れなかったかもしれないような繁忙期でも、通常時と変わらずスムーズに業務を進めることができています。 また、WMSとしての基本機能がパッケージソフトに網羅されているので、機能の拡張や追加にともなう影響箇所が明確で、これまで取り込むことが難しかった現場からの要望などにも、容易に対応できるようになりました。

2
システム運用面での導入効果

運用面では、これまで各配送センターで運用していたシステムをデータセンターに集約したことで、システムの変更作業なども1回で済むようになり、運用負荷の軽減とメンテナンス性の向上を図ることができました。また、システムがデータセンターで管理されるようになり、BCP対策の強化にもつながっています。

3
経営的な視点から見た導入効果

これまで曖昧な部分があった物流コストやシステム拡張・追加にかかるコストを、より厳密かつ客観的に算出できるようになりました。その結果、経営的な視点、すなわちROI(投資対効果)を見極めながら、拡張・追加する機能の優先順位を決めたり、限られたコストの中で最大限の効果を生み出すシステム投資を判断する基準が明確になりました。

さらなる業務効率化やシステム改善の提案に期待

システム部 システム課 課長 坂口 章氏

「日立物流ソフトウェアは、粘り強く、必要な場合はチーム体制を組んで対応してくれました」(坂口氏)

―― システム構築・導入時に苦労したことなどはありましたか。

新WMSの要件を定義する際、当社の担当者がデータベースの考え方に慣れていなかったり、そもそも要件定義の作業に慣れていなかったりしたため、お互いのコミュニケーションが上手く取れないこともありました。しかし、日立物流ソフトウェアのSEの方が、粘り強く、アシックスメンバーと机を一緒にし対応してくれたことで、徐々に相互理解を深めながら、システムの切り替えを進めることができました。

また苦労というわけではありませんが、システムを切り替える際、万が一のシステムトラブルによる業務の遅れや停止を回避するため、24時間体制で待機してもらったときのことは印象的な出来事でした。

―― 今後の拡張予定があれば教えてください。

WMSの機能については、旧システムの機能プラスアルファを実現した段階ですので、旧システムの非効率な部分や現場からの要望を、日立物流ソフトウェアと相談しながら反映していく予定です。

また、今後はWMSと連動した物流KPIを導入し、業務運営をモニタリングして課題の抽出、分析、改善へとつなげていくPDCAサイクルを確立していきたいと考えています。

―― 日立物流ソフトウェアに対する評価、要望、期待をお聞かせください。

要件定義・基本設計の段階から、開発、テスト、移行・切り替え、教育まで、精力的に対応してもらい、とても感謝しています。日立物流グループの経験とノウハウを生かした、さらなる業務効率化やシステム改善の提案をお願いすると同時に、システム面だけでなく、様々な側面から「安全」「品質」「正確性」を高めることにつながるサポートを期待しています。

アシックス物流株式会社

住所
兵庫県西宮市山口町阪神流通センター1丁目2番地
代表取締役社長
戒井 治
資本金
3億円
従業員数
210名(2014年3月31日現在)
事業内容
株式会社アシックスおよびグループ会社スポーツ用品の商品管理および配送業務、
第一種利用運送事業および運送取次事業、荷造包装資材の売買業
URL
http://corp.asics.com/jp/ ※株式会社アシックス 会社サイト

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