新物流センターの稼働までに余裕がない中、ロケーションや
オペレーション設計も支援してもらえたので、安心してWMSを
導入することができました。
新物流センターの稼働までに余裕がない中、ロケーションやオペレーション設計も支援してもらえたので、安心してWMSを導入することができました。
物流センター管理システム(WMS)
(写真左より、アサダ第一精工株式会社 取締役営業部長 刀根 康郎氏、アサダ株式会社 犬山工場長 佐藤 孝氏、
アサダ株式会社 総務部長 市橋 茂氏)
配管機械・工具や環境機器の開発・製造・販売を手がけるアサダ株式会社(以下、アサダ)では、物流センターの新設にあたり日立物流ソフトウェアの物流センター管理システム「ONEsLOGI/WMS(以下、ONEsLOGI)」を導入しました。その経緯と効果について紹介します。
* 取材時期 2018年8月
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。
* 2023年4月1日付で、日立物流ソフトウェアはロジスティードソリューションズへ商号変更しました。
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写真左上/本社、写真右上/犬山工場、
写真下/アサダ第一精工株式会社
(写真提供:アサダ株式会社)
アサダは1941年の創業以来、配管機械・工具をはじめ、フロンガスの回収装置・再生装置・破壊装置といった環境機器を開発・製造・販売しているメーカーです。
単純に製品を販売するだけではなく、装置の保守やメンテナンスなどのエンジニアリングサービスにも注力しており、国内だけでなく経済成長が著しいアジア新興国におけるインフラ構築に貢献しています。
海外における事業に関しては、1976年のドイツ・ローテンベルガー社との業務提携をはじめ、タイ・バンコクに展開する「アサダマシナリー」など、現在、世界6カ国の拠点において事業を展開しており、世界90カ国へ製品を輸出しています。今では、国内シェアよりも海外シェアの方が高い製品もあるほどです。
当社独自の高い技術力と、高品質の製品を開発・製造販売してきた実績は幅広く認められており、2003年に名古屋商工会議所から「モノづくりブランドNAGOYA」顕彰企業に選定されたのをはじめ、 2004年には愛知県から「愛知ブランド企業」に認定。さらに、2008年には米国環境保護庁より「オゾン層保護賞」を受賞しています。
「2カ所の物流センターより全国の営業拠点をはじめ、取引先さまやユーザーさまへ、商品を供給しています」(佐藤氏)
当社では現在、犬山工場(愛知県犬山市)とグループ企業であるアサダ第一精工株式会社(三重県松阪市)の2カ所の生産拠点に物流センターを設け、全国9カ所の営業拠点をはじめ、取引先さま、ユーザーさま、さらにはお客さまの現場にまで、各種製品や保守パーツ、消耗品などを供給しています。
商品の販売管理や在庫管理は全社的に導入している基幹システムで処理をしていますが、物流センターにおける入出荷業務およびロケーション管理、棚卸作業にはWMS、すなわち日立物流ソフトウェアのONEsLOGIを利用しています。
具体的な作業としては、基幹システムから受け取った入荷予定情報をもとに、入荷した商品にバーコード情報を記載したシールを貼付し、ハンディーターミナル(以下、HT)でバーコードを読み取り入荷の登録をします。
必要に応じて、セット組みなどの出荷準備処理を行い、棚入れが完了した時点で再度、バーコードを読み取り、ロケーションを登録します。棚入れ後にロケーションを移動した場合も、商品のバーコードを読み取り、再度ロケーションの登録を行います。また、商品の在庫情報はリアルタイムに基幹システムへと登録されます。
出荷に関しては、基幹システムから受け取った出荷指示情報をWMSに登録し、ピッキングを行います。ピッキングする商品とそのロケーションはHTの画面に表示されるので、作業者はその指示に従って集荷した商品のバーコードを読み取ります。出荷検品後に、出荷情報は基幹システムへと登録されます。
棚卸に関しては、作業リストに沿って商品のバーコードを読み取り後に在庫数を登録、もしくは作業リストに記載した在庫情報をWMSへと入力し、棚卸差異リストを作成します。
取り扱いアイテムは100kgを超えるような重機からビス1個にいたるまで、その数は2つの物流センター合計で約8,000アイテムにおよびます。
作業体制は、通常、犬山の物流センターは6名、松阪の物流センターは4名体制で入出荷作業を実施しており、各センターには作業員数分、加えて予備機のHTを導入しています。
生産部品は別途、生産管理システムで処理しており、物流センターで管理する商品とは分けて管理していますが、HTやバーコードなどは利用していないので、将来的にWMSの仕組みを応用できないか検討中です。
「経験やノウハウが豊富なベンダーからWMSの導入に合わせたアドバイスをもらいたいと思っていました」(刀根氏)
おかげさまでビジネスの拡大にともない、犬山の物流センターが手狭になったことから、松阪の物流センターを新設しました。それにあわせてWMSの利用開始したのですが、2つの物流センターを一元的に管理する体制を確立するなど、いくつかの狙いや目的がありました。
例えば、犬山物流センターにおける旧オペレーションは、ベテランの作業員が多いこともありある程度確立されたものではありました。しかし、細かく見ていくとムリやムダも多く、属人化していたことから改善や変更も難しい状況でした。
そのようなオペレーションを新設の物流センターに持ち込むことはできません。むしろ新物流センターには、最小限の不慣れな作業員でも運用できる作業体制を早期に確立しなければなりませんので、特別なトレーニングや経験がなくても効率的かつ正確に作業できる環境を構築する必要がありました。さらに、犬山物流センターのオペレーションも改善し、標準化・効率化する良いきっかけとなるとも考えました。
具体的には、次のような課題を解決・改善するために、WMSの導入が有効だと考えました。
また、今回、新しい物流センターを立ち上げるのにあたり、オペレーションだけでなくロケーションの最適化や安全面の向上にも積極的に取り組みたいと考えており、経験やノウハウが豊富なベンダーにWMSの導入に合わせてさまざまなアドバイスをしてもらい、最適な環境を構築したいという思いもありました。
「日立物流グループのソフトウェア会社のソリューションであれば導入を検討する価値があるだろうと直感しました」(市橋氏)
当初は、既存の基幹システムにWMSの機能を追加開発する方向で検討をしていたのですが、スクラッチで開発するのに近く、機能設計の時点で手間取り、開発コストも膨らみそうなことから、WMSの専用パッケージソフトの採用へと発想の転換を図りました。
そこで、ネットで検索して日立物流ソフトウェアのONEsLOGIのことを知り、問い合わせをしたのが導入のきっかけとなりました。
まず、検索の上位に表示されるということは、検索のキーワードに当てはまっている確度が高いという1つの証しです。そして、物流業界の大手企業である日立物流グループの物流業務に特化したソフトウェア会社のソリューションであれば導入を検討する価値は十分あるだろうと直感しました。
また、WMSの機能に関しても、そのようなベンダーの経験やノウハウが集約かつ標準化されているのであれば、当社のように新たに物流センターを立ち上げる際にオペレーションの最適化を図るのに有用です。さらに、自社開発製品なのでカスタマイズの自由度も高く、当社の商品特性に合わせた機能や業務も反映しやすいと期待しました。
問い合わせをするとすぐに資料を送ってもらえました。電話での対応も丁寧で、すぐに担当者も説明に来てくれました。実際に話を聞くと、経験が豊富で、システムのことだけでなく物流センターの設計や業務に関しても相談に乗ってもらえるので、安心してWMSの導入をサポートしてもらえると判断しました。
また、機能面では申し分なく、データの連携の仕組みだけ構築すれば基幹システム側での大きな改編も不要で、最終的には新物流センターの稼働開始に合わせてシステムをリリースしてもらうことを条件に導入を決めました。
「業務の効率化や精度向上」をはじめ、「在庫情報のリアルタイムかつ正確な把握」、「不測の事態への柔軟な対応」といった効果が出ています。各効果の詳細は次の通りです。
入出荷関連業務の平準化と標準化を図ることができ、業務に不慣れな作業者、例えば、新入社員研修の一環で来た社員でもすぐにHTを使って作業ができるようになりました。誤発送や出荷ミスもほとんどなくなり、作業負荷の軽減やスピードアップにもつながっています。
また、棚卸作業の効率化とスピードアップも実現しました。これまで数日かかっていた作業がほぼ1日で完了できるようになりました。
入出荷情報の登録により、在庫数やロケーションをリアルタイムかつ正確に把握できるようになり、万が一、基幹システムのデータと実在庫に差異があった場合でも、その要因を迅速かつ容易に調査できるようになりました。
また、ロケーションを正確に把握できるようになったことで、物流センター内のロケーションや導線設計などの最適化にもつながっています。
さらに、営業担当者がお客さまへ正確な納期を提示できたり、仕入れ担当者が迅速かつ正確に入荷情報を把握できるようになったりなど、物流センター外にも効果は波及しています。
自然災害などの影響で、定時の集荷トラックを確保できないこともあります。そのような場合、トラックを確保しやすい時間帯に合わせて一部の商品を優先的に出荷するといった緊急対応が必要となりますが、これまでは人海戦術で対応するしかありませんでした。
ONEsLOGIを導入してからは、このような場合でもピッキングの指示をシステム上で調整するだけで、通常とほとんど変わらない負荷や作業手順でイレギュラーな状況にも柔軟に対応できるようになりました。不測の事態が発生しても、現場で柔軟に対応できる体制を確立できたことは大きな効果となります。
他社物流センターの見学の手配やロケーション管理に関するコンサルティングといった支援により、当社の理想とする物流センターのイメージを今できる範囲で具現化できました。迅速で誠実な対応には感謝しています。
また、WMSの導入や物流センターの新規開設、在庫の振り分けなど、ほとんどのことが初めての経験であった当社にとって、日立物流ソフトウェアがいつでも相談に乗ってくれる、サポートやアドバイスをしてくれるという安心感は何事にも変えがたく、期待以上のものでした。
これからも細かな修正や拡張を加え、より理想に近い環境を実現していきたいと考えています。これまでと変わらない支援や対応を期待しています。